日本では、一年間に一定以上に医療費を支払った場合に確定申告をすることで、医療費控除によって病院で治療を受ける際の費用を大いに浮かせることができます。
しかし、病院で受けることができるサービスのすべてがその控除の対象というわけではありません。
妊娠・出産を考えている人々にとっては、それらにかかわる費用が適用範囲内なのか気になるところです。今回は出生前診断にかかわる費用について紹介します。
NIPT(出生前診断)とは
妊娠と出産の後には子育てが始まり、養育費という家計にとって大きな負担となるので安易に考えることはできません。
健常な心身の子どもであっても費用が掛かるものですが、先天性の何らかの異常があったとしたら、より一層経済的な負担は大きくなる可能性が高まります。
それらの負担が、子どもが生まれてから判明するのと、妊娠状態で知るのとでは心構えとして大きく異なります。そのため、妊娠中にお腹の中にいる子どもに先天性の異常があるかどうかを診断する出生前診断を受ける人が多くなっています。
一口に出生前診断といっても、様々な検査方法があり、検査の精密度も異なるものです。
胎児の映像や胎盤から採取した成分から調べることもあるほか、胎児からとった血液で染色体を調べるといった方法もあります。
その中のひとつとしてNIPT(出生前遺伝子検査、新型出生前診断)と呼ばれる検査があり、この検査は妊婦から採取した血液から胎児のDNAに含まれている遺伝子情報を解析して染色体の異常があるかどうかを診断するというものです。
NIPT(出生前診断)は、医療費控除ではない
医療費控除の対象となる医療機関で支払った費用は、医師や歯科医師などによって行われた診療の対価として支払われ費用が該当します。
医療機関では、人間ドッグや健康診断などといった、怪我や疾患の治療ではない行為も行われていますが、これらに対して支払った費用は医療費控除の対象とはなりません。
ただし、検査の結果で何らかの疾患が発見されて、その治療を検査に引き続いて行った場合には治療のための診断とみなされるため医療費控除の対象となります。NIPT(出生前診断)は治療ではなく診断です。
胎児の染色体の異常を調べるための診断であるため、治療にはなりません。
また、染色体の異常が発見されたとしても、その異常を解消するための治療法は存在していないのが現状です。
そのため治療のための診断とみなされることもありません。
これらのことからNIPT(出生前診断)は医療費控除の対象とはなりません
(出典;https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/80.htm)
NIPT(出生前診断)を安く抑えるコツは、料金比較をしてクリニックを選ぶこと
NIPT(出生前診断)は、どれだけの費用が掛かったとしても医療費控除の対象となることはありません。
そのため、診断を受ける際にはできるだけ費用を安く抑えることが重要となります。
費用を安く抑えるためのコツは、複数のクリニックにおいて料金を比較して安い場所を選んで受けることです。
出生前診断は被確定的検査と確定的検査が存在しており、被確定的検査を受けた後に、確定的検査を受ける流れが一般的です。NIPT検査は被確定的検査に該当し、このほか超音波検査やクワトロテストなどの被確定的検査があります。
確定的検査は、おおよそは羊水検査が行われることになるでしょう。
それぞれの検査にかかる費用は異なり、安ければ1万円程度ですが、高ければ20万円ほどかかるものもあります。また費用のほか、受けることができる時期や制度も異なります。
そのため、出生前診断にかかる費用を考える際には単純にNIPT検査だけではなく、羊水検査などの追加検査が必要になった場合も考えて比較することが重要です。医師やカウンセラーと相談しながら、比較検討するとよいでしょう。
妊娠、出産に関わる治療や検査の医療費控除有無
妊娠や出産にかかわる行為は、出生前診断だけではなく様々なものがあります。
これらの内どこまでが医療費控除の対象となるかを知っておくことは、費用の節約のために重要です。
不妊治療
なかなか妊娠することができない人が受ける不妊治療は、段階を踏むごとに費用が高くなります。また、不妊の改善に良いとされるマッサージや漢方の処方を受ける人もいます。
これらの治療にかかわる費用は、保険適用外のものもありますが、多くが医療費控除の対象となります。不妊治療の治療と検査費用、その際の移動費、マッサージ・鍼灸費、漢方薬費用などは対象です。
マタニティエクササイズ
不妊治療にかかわるマッサージや鍼灸費用は対象となりますが、マッサージ師や鍼灸師、柔道整復師など国家資格を取得している人の施術に限られます。
そのため、資格保有者ではないマタニティエクササイズなどの講座を受講しても、その費用は医療費控除の対象とはなりません。
陣痛開始で病院に向かった際のタクシー代金
陣痛に限らず、病院や診療所などの施設へのいく際の費用はタクシー代でもバス代であっても医療費控除の対象です。
ただし、一般的に支出される水準の範囲の場合に限られます。
医療費控除の対象を知り節約を
妊娠や出産は喜ばしいものですが、その過程において、および子育てには非常に大きな費用負担があります。
その負担をできるだけ軽減させるためには、医療費控除や数多くの助成金制度を活用することが必要です。
出生前診断は医療費控除の対象にならないので、できるだけ安く診断を受けることができるクリニックを探し、余裕をもって対策を立ててください。